ボルボXC60 マイナーチェンジで変わったのはグリルだけじゃない。ベストセラーにはワケがあるのだ

ボルボのラインアップの中核を担うのはXC60だ。スカンジナビアン・デザインとしっかりした走り、そしてアップデートされたインフォメインメントで、デビューから時間が経っても一級品の商品力を持つ。そのXC60のマイナーチェンジモデルを瀨在仁志が試乗した。
TEXT:瀨在仁志(SEZAI Hitoshi)PHOTO:Motor-Fan/Volvo

売れ続けるには理由がある

XC60はグローバルで見るとボルボのベストセリングモデル。世界で150万台以上が販売された。日本市場ではXC40に継ぐ人気モデルだ。

ボルボと言えば長いルーフと広いラゲッジルームを持つ、低くて伸びのあるステーションワゴンのイメージがどうしても頭から離れない。しかし、しっかりと調べてみると、2024年の日本の販売実績ではワゴンのVシリーズが占める割合は全体の16.8%にすぎず、60.7%はSUVのXCシリーズが占めている。

そのXCシリーズを牽引しているのがミドルレンジをカバーするXC60だ。これまでに150万台以上を世界で販売し、日本でも2017年の導入以来およそ2万3000台が市場に受け入れられている。

しかもXC60はロングセラーモデルでありながら24年には過去最高の年間販売記録を残し、この6月にはマイナーチェンジを敢行し、さらに勢いを加速させる。

全長×全幅×全高:4710mm×1900mm×1660mm ホイールベース:2865mm 最低地上高:215mm
トレッド:F1655mm/R1655mm 最小回転半径:5.7m
車両重量:1900kg 前軸軸重1050kg 後軸軸重850kg
ボルボのアイコンであるアイアンマークとシンクロした2方向から伸びる車線が重なり合うデザインとなったフロントグリル。

今回試乗したモデルは3モデル用意されている中間グレード。受注比率が約6割近くに上るXC60のUltra B5 AWD。上位グレードはPHEVとなるから、48VのマイルドHEVモデルの上級グレードとなり、価格は878万円。エントリーモデルのplus B5は標準装備を充実し、より高級感を高めながら、90万円ダウンの789万円。搭載されるパワーユニットはともに2.0L・48VマイルドHEVで250ps/360Nmと同スペック。駆動方式はUltraのAWDに対してPlusはFFと異なっている。

XC60 B5 PlusXC60 Ultra B5 AWDXC60 Ultra T6 AWD Plug-in Hybrid
価格789万円879万円1,029万円
パワートレーン2.0Lターボ+48V・MHEV2.0Lターボ+48V・MHEV2.0Lターボ+PHEV
駆動方式FWDAWDAWD
エンジンはミラーサイクルを採用。ターボチャージャーはVNT(バリアブルノズルタービン)ターボを採用。B5 AWDでWLTCモード燃費が12.2km/L→12.8km/Lへ向上
エンジン
形式:直列4気筒DOHCターボ+48Vマイルドハイブリッド
型式:B420T11
排気量:1968cc
ボア×ストローク:82.0mm×93.2mm
圧縮比:11.5
最高出力:250ps(184kW)/5400-5700rpm
最大トルク:360Nm/2000-4500rpm
燃料供給:DI
燃料:プレミアム
燃料タンク:71L
モーター:3303型交流同期モーター
最高出力:13.6ps(10kW)/3300rpm
最大トルク:40Nm/2250rpm

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ボルボらしいガッチリしたエンジンマウント

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ターボはこの位置(後方排気)。ターボはガソリンターボでも採用例が増えてきたVNTターボ

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今回の大きな変更点はパワーユニットが吸気系やピストンのデザイン、VVTの制御変更によってミラーサイクル化を実現。可変ノズルタービンターボ(VNTターボ)等の変更も加えることで燃費をFFモデルで12.6km/L→13.3km/L、AWDモデルで12.2km/L→12.8km/Lへと向上させている。

北欧家具に囲まれたリビングを思わせるインテリア。インテリアにはバイオ素材由来のノルディコや100%リサイクル素材で編まれたネイビーヘリンボーンウィーブの導入などサステナブルな素材も選べる。

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内外装もXC90と同様のグリルの採用やレザーフリーインテリアを拡大。センターディスプレイは11.2インチに拡大され、次世代CP基板にアップデートされたことで処理速度2倍、グラフィック生成速度では10倍に向上させている。使い勝手に関しても階層が浅くなったことでほしい情報がすぐに手に入りやすくなったという。

大きな画面は視認性に優れているうえに、必要な情報がトップ画面に並ぶことで、操作がしやすくなった半面、機能を識別するまでには少々時間を要した。やはり、日常使うものはメカスイッチの方がアナログ派にはありがたい。

タイヤ235/55R19 ピレリP-ZERO
AWDはハルデックスカップリングを使う。8速ATはアイシン製だ。

装備面ではエントリーモデルのPlusに対して、新デザインの19インチホイール、パノラマガラスサンルーフ、シートベンチレーションやリラクゼーション機能付きパワーシートなどを加えるなど、上級グレードとしての満足感を満たしてくれている。

安全面においてはボルボらしい万全の対応に加えて、パイロットアシストにはエマージェンシーストップアシスト機能を追加。追従走行中、フリーハンド警告に従わない場合、自動で安全な場所に車両を停車させるという。

『こう見えて身軽なんです』

ワインディングを含む123kmを気持ち良く走って平均燃費は11.3km/L(平均時速48km/h)。

燃費計をリセットさせ、さっそく進路を有料道路から、ワインディングへと進める。ミラーサイクル化し燃費を向上させたパワーユニットの実力を知るには少々厳しい環境ながら、一方で走りの良さが光った。見た目は重量級のモデルにもかかわらず、ワインディングでの動きは意外なほどに軽快。

横置きユニットにもかかわらず、アクセルのオン/オフによるエンジンの前後振動も感じられず、加減速操作が遅れなくタイヤへと伝達される。しかも、敏感に反応することなく荷重をフロントに移動させ、旋回中の駆動力変化も微小。大きく開けていくとイン側がズルっと駆動力が逃げる様子もあるが、そんな時こそリヤの駆動力の助けを持って加速感をキープ。

デザイン面の変更はフロントバンパー/グリル/テールパイプ(が隠された)/ホイール/新色である。

基本はFFベースとして機能し、滑るとリヤへ駆動力を伝達させるオンデマンド方式だからこそ、軽い身のこなしと安定感を両立。不整地を走ることが少なく、滑りやすい路面での穏やかなグリップ復帰を望むレベルなら十分。

また、48VマイルドHEVゆえに電池容量も小さく、重さを感じさせないのもいい。最近の重量級SUVが直線番長ばかりでワインディングではその重さに苦労することが多いなか、スカンジナビアン・インテリア同様、その走りも淀みがなくすっきりとし好感がもてる。

肝心のパワーユニットは以前よりも軽快に吹け上がる印象で、ノイズの侵入も少なくクリア。ピラー周りに吸音フォームを充填するなどの遮音対策を加えたことの効果だろう。

見た目は大きくともその乗り味は、ハンドリング、エンジンフィールともに軽快。大きさを感じさせない走りとすっきりとしたインテリア同様、無駄を排した清涼感が気に入った。

燃費は山道で低いギヤを多用して、回し続けたにもかかわらずWLTCトータルモードの12.8km/Lと大差のない11.2km/Lをマーク。XC60に乗り終えて『こう見えて身軽なんです』。と聞こえてくるようだった。

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ボルボXC60 Ultra B5 AWD
全長×全幅×全高:4710mm×1900mm×1660mm
ホイールベース:2865mm
車重:1870kg
サスペンション:Fダブルウィッシュボーン式/Rマルチリンク式
駆動方式:AWD
エンジン
形式:直列4気筒DOHCターボ+48Vマイルドハイブリッド
型式:B420T11
排気量:1968cc
ボア×ストローク:82.0mm×93.2mm
圧縮比:11.5
最高出力:250ps(184kW)/5400-5700rpm
最大トルク:360Nm/2000-4500rpm
燃料供給:DI
燃料:プレミアム
燃料タンク:71L
モーター:3303型交流同期モーター
最高出力:13.6ps(10kW)/3300rpm
最大トルク:40Nm/2250rpm
トランスミッション:8速AT
燃費:WLTCモード 12.8km/L
 市街地モード8.9km/Lkm/L
 郊外モード:13.3km/Lkm/L
 高速道路:15.3km/L
車両本体価格:879万円

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著者プロフィール

瀨在 仁志 近影

瀨在 仁志

子どものころからモータースポーツをこよなく愛し、学生時代にはカート、その後国内外のラリーやレースに…