【BMW Mの軌跡】高出力3.0リッター直6ターボを搭載した初代「M4」

モータースポーツ直系の新世代スポーツクーペ「M4」を振り返る【BMW Mの軌跡】

F82型「M4」。
F82型「M4」。
鮮烈な印象を与えるBMWのスポーツイメージ。その源流はモータースポーツ、ひいては現在の「BMW M社」にある。本連載では、BMWとM社が築き上げてきた歴史を振り返り、象徴的なモデルとともにその軌跡を辿る。今回は4シリーズとして車名を改めたクーペ「M4」を紹介する。

M4(F82)

先代を大きく上回る最高出力

2011年、BMWは第6世代となるF30型「3シリーズ」を発表した。しかしながら、そこに2ドアモデルはラインナップされなかった。2012年12月に「コンセプト 4シリーズ クーペ」が発表された後、2013年にF32型「4シリーズクーペ」として販売が開始されたのだ。そして、2013年9月にBMW M社はF80型「M3」とともにF82型「M4」を発表する。

エンジンは先代のV8自然吸気ではなく、2979cc直列6気筒DOHCインタークーラー付きツインターボ“S55B30”ユニットを搭載。これはN55型直6をベースにBMW M社が設計、開発したもので、従来のダブルVANOS、バルブトロニックに加えて高剛性のクローズドデッキ・シリンダーブロック、軽量クランクシャフト、強化ピストン&コンロッド、最大ブースト圧は1.2barのモノスクロール・ツインターボチャージャー、アクティブエキゾースト、インタークーラーなどの採用により、先代を大きく上回る最高出力431PS/5500〜7300rpm、最大トルク550Nm/1850〜5500rpmを発生。また燃費、CO2排出量も25%以上向上したほか、スロットルレスポンスが改善されたのも特徴であった。

組み合わせられたトランスミッションは、標準の6速MTとオプションの7速DCTの2種類で、0-100km/h加速は6速MTで4.3秒を記録。一方重量的には40kgほど重い7速DCTはそれを上回る4.1秒を記録した。

電子デバイスも充実

シャシーは2812mmのホイールベースをはじめ、先代に比べてひと回り大型化したF32型4シリーズをベースに、トレッドの拡大に伴い全長4671mm、全幅1870mm、全高1383mmと若干ワイド化。

またフロント・マクファーソンストラット、リヤ・マルチリンクのサスペンションのコントロールアームなどをアルミ化したり、ルーフに加えストラットタワーバー、プロペラシャフト、リヤトランクフードの構造材にCFRP(炭素繊維強化プラスチック)を採用。さらにアルミ製ボンネット、サイドパネルなど、各部に徹底した軽量化を施した結果、車両重量1497kgと先代M3クーペに対して約80kg軽く仕上がっている。

加えて左右リヤタイヤのロック率を0%から100%まで自在に調整できるアクティブMディファレンシャルや、電動パワーステアリングを3段階に調整できるMサーボトロニックを搭載するなど、電子デバイスの充実も図られている。面白いところでは、F10型M5で採用されたエンジン音をスピーカーで車内に増幅して届けるアクティブサウンドシステムが、初採用されているのも特徴である。

このM4ではクーペと同時にF83型「M4コンバーチブル」も発売。その内容は基本的にクーペと同一だが、20秒で開閉可能な電動ハードトップにはクーペと同様CFRPを使用。しかしながら車両重量は6速MTで1750kgと、178kg増加しており、0-100km/h加速も6速MTが4.6秒、7速DCTが4.4秒とクーペより遅くなっている。

モータースポーツシーンにおいても活躍

そのほかM4のバリエーションとして2016年に3.0リッター直6ツインターボをウォーターインジェクションなどの採用により最高出力500PS、最大トルク600Nmにチューン。軽量化したトランスミッション、チタンエキゾースト、KW製サスペンション、ロールケージなどで武装した「M4 GTS」を700台限定で発売した。

2017年には450PSへファインチューンされた直6エンジンを搭載し、スプリング、ダンパー、アンチロールバーなどサスペンションを強化した「M4コンペティション・パッケージ」を発売している。

一方モータースポーツシーンにおいても「M4 DTM」が2014年からDTMへの参戦を開始。2014年と2016年に見事チャンピオンを獲得し、2014年にはM4をベースに23台、2016年にはM4 GTSをベースに200台の限定車「M4 DTM チャンピオン・エディション」が発売されている。

F12型M6クーペ。

M5を凌ぐ性能を発揮するハイパフォーマンスクーペ2代目「M6」【BMW Mの軌跡】

鮮烈な印象を与えるBMWのスポーツイメージ。その源流はモータースポーツ、ひいては現在の「BMW M社」にある。本連載では、BMWとM社が築き上げてきた歴史を振り返り、象徴的なモデルとともにその軌跡を辿る。今回は2代目の「M6」を紹介する。

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藤原よしお 近影

藤原よしお

クルマに関しては、ヒストリックカー、海外プレミアム・ブランド、そしてモータースポーツ(特に戦後から1…